こんにちはCGデザイナーやりつつ短編アニメを制作中のアリマと申します。
スティーブ・ジョブズさんがお亡くなりになった後、テレビなどの特集で「ピクサーもジョブズが創った!」みたいなのを見た方も多いのではないでしょうか。
とはいえ具体的にジョブズがどういったことをしたのか、というところまでは知らない人も多いと思うので、ピクサーの社長エド・キャットムルさんの本「ピクサー流 創造する力」を読んで創造する力を手に入れたと思い込んでる僕がざっくりと簡単に説明してみたいと思います。
ちなみにこの本は「これを読めばピクサーみたいなおもしろい物語が作れるよ!」みたいな本ではなく、ピクサーの歴史とマネジメントのこと、ジョブズとの思い出、みたいなものが書かれています。

ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
- 作者: エイミー・ワラスエド・キャットムル,石原薫
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2014/10/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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スターウォーズでおなじみのジョージルーカスが設立したルーカスフィルムですが、ジョージルーカスの離婚により発生した莫大な慰謝料が原因で事業を縮小せざるを得ない状況になります。
そうして売却されることになったのがコンピュータ部門だったピクサーで、買収したのがアップルを解雇され次に賭けるべきものを探していたスティーブ・ジョブスでした。
元々スティーブジョブズの考えはアニメーションスタジオをつくることではなく、アップルに対抗する次世代の家庭向けコンピュータをつくることにあったようです。
こうしてピクサー・イメージ・コンピュータを販売する事業として新たなスタートを切ったのですが、思うように売れず赤字が続きました。
スティーブジョブスが5400万ドルもの大金を自分のポケットから会社に注いでくれたおかげでなんとか存続できるような状況でした。(3度ほど売却しようとしたそうですが。。)
そこでピクサーは大きく舵をきることになります、ハードウェアの販売をやめ、違う場所に飛び立つことを決めたのです。
ピクサーの現社長エド・キャットムルはその時の心境を著書「ピクサー流 創造するちから」の中でこう綴っています。
次に降り立つ場所が我々の体重を支えられるかを知る術はない。
この飛躍を後押ししたのはただひとつ、自分たちが最初からやりたくてしかたのなかったことをとことん追求するという決意だった。
つまりコンピュータ・アニメーションだ。
こうしてCGアニメーションで勝負することを決めたピクサーはジョン・ラセターの作った短編アニメやCMなどでクリエイティブな賞をとることにより実績を作り、ついにはあのディズニーからある話が舞い込んできたのです。
「ピクサーが長編映画を作り、ディズニーのものとして配給したい。」
こうして作られたのがトイストーリーです。
これまで、ピクサーにはほとんど関与しなかったジョブズがここで動きます。
ジョブズは言いました。
「トイストーリーを公開する前に株式を公開しよう。」
ジョン・ラセターとキャットムルは反対しました。
「いや。とりあえず2、3本獲ってからにしよう。」
ジョブズは答えます。
「ダメだ。今やるべきだ。」
ジョブズには戦略がありました。
「トイストーリーがヒットすれば、ディズニーはピクサーの事を怖いライバルだと感じてパートナーとして手元に置こうとするだろう。
そうしたらもっと有利な条件で契約できるようになる。
具体的に言うと、興行収入をディズニーときっちり折半する条件にしたい。」
その為には制作予算の半分を用意しないといけない。
だからこそ今、新規株式公開(IPO)して資金を得る必要があるんだ。」
そして、トイストーリー公開の1週間前に株式を公開。
ピクサー初の映画が興行収入記録を打ちたて、IPOによって1億4000万ドル近い金額を調達することに成功します。
さらに、ジョブズの思惑通りディズニー側から「契約を見直してピクサーと提携関係を結びたい」という申し出があり、折半という条件も飲んだのです。
ピクサーをディズニーに売ろうと提案したのもジョブズです。
「世界中の映画館で上映するためのマーケティングと配給を行うパートナーが必要だ。
合併によって大きく安定した舞台が用意される。」
ジョブズはさらにジョンラセターとキャットムルにディズニー・アニメーションとピクサーの両方の経営を任せるという提案もしていました。
当時低迷していたディズニーはその後キャットムルを中心に一から制作体勢を見直すことにより「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」などのヒット作品を生み出し、見事蘇ったのです。
ジョブズはよく傍若無人のように取りざたされますが、ピクサーの創造する力を尊重し会議などには参加しませんでした。
試写会のあとにコメントすることがあったそうですが、決まってこう前置きするのです。
「自分は映画づくりに関しては素人だから、まったく無視してもらっても構わないが・・・・」
さらにジョブズはピクサーのスタッフにこう漏らしたことがあるそうです。
「生まれ変わったらピクサーの映画監督になりたい」
ジョブズとピクサーの関係はあまり知られていませんが、監督たちとは信頼関係があり、ジョブズにとって特別な場所だったようです。
「ピクサー流 創造するちから」には巻末付録としてピクサーの原則なるものが書かれていますので、気に入ったものを抜粋して紹介しちゃいます。
会議室より、廊下で真実が語られているとしたら、会社として問題がある。
信頼とは、相手が失敗しないことを信じるのではなく、相手が失敗しても信じることである。
間違っても安定を目標にしてはならない、安定よりもバランスのほうが重要である。
さて、ではどのようにしてピクサーは次々とヒット作を生み出したのでしょうか。
その秘密はこちら。
